メッセージ

【景観建築学科】トップランナーからのメッセージ

自然との触れあいや植物の育成を通して景観建築設計を学ぶ

 ニューヨークのセントラルパークを設計したF.L.オルムステッドは自らを「ランドスケープ・アーキテクト(landscape architect)」と称し、その仕事「ランドスケープ アーキテクチャー(landscape architecture)」は、旧来、「造園」と訳され、定着してきました。いま、新たに「景観建築」を称する意味と方向性について触れておきます。それは簡潔に言って、造園が主として農学系の分野に属していたのに対し、景観建築は建築学部に新たな分野を開設しようとするものです。実際に造園の設計をする際には、建築や土木あるいは都市計画の専門家と協働、協力して行わねばなりません。特に建築家との協働は重要な仕事です。
景観建築が建築系の学部に属することは、日常的に建築に関する知識や技能を習得しながら景観建築を学べることであり、これまでの造園に比べて大いに有利であると思われます。そのようななかで、景観建築に重要であり、かつ、その特色となる目標は、建築や都市の人工的景観に自然的景観を組み合わせてやわらげ、快い風致と調和的な風景をつくりあげることです。そのために必要なのは自然や植物に関する知識や技能の習得です。大学の管理する山林に出かけスケッチをするなど自然と触れあい、草本や樹木の名前や形態を学びます。さらに、圃場などで土壌の改良、花卉類や地被類の栽培、挿し木や苗木の植栽、樹木の剪定など、草花や樹木を育て観察することを通して、植物の性状、成長過程などを学びます。このような課程で得た知識と技能は、景観建築設計、とりわけ植栽計画・設計(planting design)を行うための重要な基盤となるのです。建築デザインと植栽デザインを習得した新しい景観建築設計者の誕生を期待したいと思います。

嵐山・天竜寺へのフィールドワーク

実習:樹木の同定

  • 吉田 博宣

    農学博士, 京都大学名誉教授, 武庫川女子大学 非常勤講師